【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 




十年前、台風の被害に合い反乱した川の土手で、男の人に声をかけられた。



『避難所に行かないの?』

そう言った彼に、この人は一体なにものなんだろう、と横目で様子を伺っていると、彼は目の前の倒木だらけの濁った川をみつめながら、自然な口調で話しだした。

『避難所に、缶詰とか非常食とか運んできたんだけど、こどもたちに『なんだ缶詰かよ』ってがっかりされて、ちょっとふてくされてたんだよね』

その言葉に、隣を見る。見たことのない人だとは思ったけど、やっぱり町外から来た人なんだ。
ぽーんと投げられる缶詰を目で追いながらそう思う。

『ボランティアの方なんですか?』
『まぁ、そんな感じ』
『仕方ないですよ。缶詰は便利ですけど面白みがないし』
『面白みねぇ』
『子供に人気のキャラクターのシールでも貼れば、喜ぶかもしれませんよ』

そんな私の無責任な発言に、その人は驚いたようにこちらを見た。

『そっか。それいいかも』

ポケットをさぐり、黒いペンを取り出すと、持っていた缶詰になにかを書き始める。

 
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