【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
『初デートで花火大会に行く約束だったんです。雨で中止になってしまったんですけど』
『残念だったね』
優しく言われ、激しく首を横に振った。
『雨が降っても降らなくても、どうせデートにはならなかったんです』
『どういう意味?』
『クラスの男子に、からかわれていただけなんです。好きだって言われて信じ込んで、初デートだって浮かれて、浴衣を着て髪を結ってひとりで待ち合わせの場所に立ってる私を見て、クラスの女の子たちが『からかわれてるだけなのに、本気にして騙されててかわいそう』って笑ってました。そのまま雨の中待っていたけど、結局千葉くんは来ませんでした。やっぱり騙されてたんです』
手のひらの中の缶詰を、ぎゅっと握りしめながら言う。
『彼氏に、どうして来なかったのか理由を聞いた?』
そう問われ、首を横に振った。
『それから台風で大騒ぎになって会ってません。それに、会うのが怖いし……』
『どうして?』
『だって、冷静に考えたら、私みたいに無表情で地味で可愛げのない女を、好きになってくれる人がいるわけないです』
『そうかな』
隣に座る彼が、こちらを見て首を傾げた。