【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「あ、ありがとうございます」
そう言って俯くと、長い指に顎を捕まえられた。優しく正面を向かせられ、睨まれる。
「こういう時は、ありがとうございます、じゃなくて、『私も好き』って抱きついてきてほしいんだけど」
「す、すいません。私、こういう時の作法に本当に疎いので」
「作法に疎いって!」
慌てて言った私の言葉に、専務が肩を揺らして笑った。
「本当に恋愛経験が乏しくて、申し訳ないです」
もういい歳なのに、世間知らずで子供みたいな自分が情けなくて、手で顔を覆って謝る。
そんな私に、専務はにっこりと笑った。笑うと目尻が下がる、あのずるいくらい魅力的な笑顔で。
「大丈夫。ちゃんと俺がこういうときの作法を躾けてあげるから」
「……躾けるって、やっぱりペット扱いじゃないですか」
からかわれていると気づいて、眉をひそめる。
怒った私に、専務はますます楽しげに笑う。
猫耳や尻尾がなくたって、専務は私の気持ちなんかお見通しで、彼の一言に簡単に振り回されてしまう自分が悔しい。
「もう、専務の意地悪」
すねて背を向けると、後ろから抱きしめられた。
専務が私の肩に顔を乗せ、クスクスと甘く笑う。