【完】うぶな私がイケメンチャラ男と恋するまで
「芹澤さーん、505号室にドリンク持って行ってくれるー?」
「はい、分かりました!」
そう言って505号室の部屋の前に立ち止まる。
初めて月星と出会ったのはこの部屋だ。
私がこの扉を開けてドリンクを置いた。
高校生がいるのにお酒を置いて良いのかとか、チャラチャラした男だなって思って早く帰ろうとしたところに目をつけられた。
初めて至近距離で見る彼の整った顔にドキドキしたのを覚えてる。
あれからそんなに時間は経ってないのに色んなことがあったな…
「…失礼します」
「あ、ありがとうございまーす」
もちろん、そこにいるのは月星ではなくて学生の女の子3人組。
感傷に浸ってしまいそうだけど、しっかりしなくちゃ。
あの人とはもう会うこともないんだから。
私は私でちゃんとする。せっかく橋本くんがああ言ってくれたんだから!
よしっと両手で頬を叩く。
「戻りましたー」
「おかえりーってあれ?友達にでも会った?」
バイト先の先輩が嬉しそうな顔をして聞いてくる。
「えっ?誰にも会ってないですよ?」
「あっれー何か…ふっきれた?みたいな感じしたからさー。
そっかそっか」
おっかしいなーと首を傾げる先輩。
そんな先輩とは裏腹に私は少し晴れやかな気分になった。
きっと私はこんな風に1歩ずつ進んでいくんだろう。