おはよう、きみが好きです
「おい、誰か救急車呼んで!!」
「あのふたりを道路から離さないと!!」
遠くで、慌てたような声が聞こえるのに……。
あたしと八雲の間では、無音のように静かな時が流れていた。
時が止まったような、衝撃。
「おー……無事、みてーだ……なぁ……」
なんで、そんな風に笑うの。
あたしは言葉を失ったまま、血を流して優しく微笑む八雲の顔を見つめることしか出来ない。
「間に合って……良かっ……た」
「なに、言って……っ」
全然、間に合ってなんかないよ。
あたしの代わりに、八雲がすごい怪我をしてる。
あたしの体を、全身で庇ったんだ。
「ったく……手の……かかる……。俺が、同じ……時間、登校……なかったら、どーする……つもりだった……んだよ」
「八雲……お願い、もう喋らないでっ。傷がっ……酷いのにっ」
あたしは、鈍く痛む手を持ち上げて、八雲の頬に触れた。
冷たい……しかもこのヌルッとした感触は……血だっ。
こんなに、血が流れて……。
手が、カタカタと震える。
この人を、失うかもしれない……そんな恐怖に。