見上げた空は広かった
アルベルト2.2 人間には幸福の他にそれと全く同じだけの不幸が常に必要である。
「好きだよ、ハナ」

これはまぎれもない真実だった。

でも決して彼氏になりたいとか将来を共にしたいとかそういう意味ではない。
俺にも分からない。

彼女はいつも黙って俺を受け入れるから、俺はハナという存在に依存してしてしまったのだろう。
それは肉体的にという訳でなく精神的にも依存し始めている。

だからたまに、「ラウラが俺の前から消えた様に前の彼女が消えた様に、きっと彼女もいつか俺の前から消えるのだろか。」と不安でいっぱいになる。

でも俺がハナにそれ以上を求めないのも、また彼女がそれ以上を求めていない理由も、明らかに俺自身が誰かを幸せにするには器量の足りていない人間だから。

ハナはきっとそんな俺のことをかわいそうだなと思っているだろう。


端からみれば普通のカップルとも変わらない。
でも俺らは付き合っていない。

俺らの関係はセフレというには深すぎて、友達以上恋人未満というにはちっぽけだ。

どんな関係と言えばいいのか正しい言葉が見つからない。

でも俺はたまにひどく彼女を恋しくなって、ひどく彼女を独り占めしたくなる。
俺にそんな権利などなければその権利を主張する勇気すらない。

ただ自己中心的なちっさい男だ。
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