花束〜Bouquet〜【短編】
ある日の日曜日。
彼女の部屋で手料理の夕食を食べていると、今日も花が飾られていた。
その花は白く小さな花で、花に興味のない俺でもかわいいと感じた。
まるで彼女のように可憐で純真無垢なイメージの花だった。
「‥これ、なんて花?」
花瓶にさされている花を指差して聴いてみた。
日頃は花に無関心な俺からの思わぬ質問に、彼女は一瞬驚いた様子だったが、
「それはかすみ草っていうの」
と、いつもの笑顔で答えてくれた。
そして、「私の一番好きな花なの」 と穏やかに笑った。
それから、彼女は花について話し始めた。
俺が少しでも花に興味を示したのがよほど嬉しかったのだろう。
いつにも増して彼女は饒舌だった。
「この花で作った花束はきっと綺麗なんだろうな」と夢見るように、彼女ははにかんで微笑んだ。