花束〜Bouquet〜【短編】
沈黙の中、口を開いたのは俺の方だった。
俺のその一言で、彼女の表情はぱあっと明るくなった。
「…あなたのお名前は?」
彼女は明るい笑顔でそう言った。
「‥浅野蒼太」
照れくさくて少しぶっきらぼうにそう言うと「素敵な名前ですね」と、また彼女は微笑んだ。
君の笑顔に俺の心はますます奪われていった。
お互いに連絡先を交換し、この日は別れた。
この日から二人の関係は一歩ずつ進み始めたのだ。
食事をしたり、会う回数を重ねるごとに彼女のことを少しずつ知っていくことができた。
彼女は俺の一つ年下の21歳。
年の割には幼い顔立ちで、ナチュラルメイク。
高校卒業と同時に都会と呼ばれるこの街に出てきて、働いているらしい。
見た目よりも中身はしっかりしているというのが、会話の中でも窺えた。