ただ、そばにいて。
 長町南駅に着くと、残っていた乗客もほとんど下車した。
 このあたりは仙台の副都心と呼ばれる地域で、商業施設や高層マンションがひしめくように連なっている。

 柚月が旅行に行ってしまったので、しばらくは気ままなひとり住まいだ。

 学生と社会人とでは生活サイクルが違う。
 だから普段からふたりの時間が重なるのは多くなかったが、それでも家を占領できるというのはなかなか嬉しいことだった。

 リビングの大型テレビで古い映画でも見ようかな。
 そんなことを思い立ち、二十四時間営業のレンタルショップに寄ってみた。

 ホラー、コメディ、アクション、それとも泣ける恋愛ものがいいか。

 話題作、とラベルの貼られたDVDは、ほとんどが貸し出し中のタグが括りつけられている。

 公開された当時、友達と見にいった柚月が、
「お姉ちゃんも見に行きなよ。おすすめだよ!」
 と最後のどんでん返しのオチまで話して聞かせた作品だ。

 青春学園ものなんか見る年齢でもないし、ストーリーはラストまで知っていたが、なんとなく気になっていたので、借りてみることにした。
 そのほかに、サイコパスものの心理ミステリーを選ぶ。


 カウンターの隣のワゴンでは、お菓子や文房具、小さな観葉植物までもが売られていた。

 最近のレンタルショップはいろいろなものを扱っているのだな。

 瑞希は、淋しそうにしてた小さなサボテンをひとつ手に取る。
 サボテンだったら水もやらなくていいし、面倒なことが嫌いな瑞希でも育てられるだろう。
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