媚薬と私

由紀子とプライベートで、二人きりで会うのは、これが初めてだった。


お互い同じ職場で、上司と部下の関係だった為もある。


いや、それ以上に、僕は由紀子に心を開いていなかったのだ。


一緒に仕事をしている時は、気が合うなとは思っても、プライベートで会うと考える事は
無かった。


僕は既婚者だし、当たり前か・・・・。


いや僕自身、いつも仕事に対しては、心が張りつめていて、余裕が無い事が多かった。


だから由紀子に限らず、職場の人間とは、一線を置いていたのだ。


しかし由紀子が退職した為、由紀子との職場絡みの人間関係の規制は無くなった。


由紀子も、そのように思っているだろう。



僕は、待ち合わせ時刻の20分前に着いた。


■■駅に来るのは、久しぶりだった。


あまり利用する機会が無いが、ターミナル駅としても栄えていて、とても便利な所だ。


駅周辺は、多数の大きなデパートがある。


また、繁華街とビジネス街があり、活気のある所だ。


やはり元部下とは言え、女の子と二人きりで会うのは、心地よい緊張感がある。


しかも新鮮だ。


結局、今日、由紀子と会う事は、妻には伝えなかった。


隠すつもりはないのだが、由紀子について、色々話す事に、面倒くさく感じたのだ。


いや、隠すという事は、心の片隅に、後ろめたい気持ちがあるからなのだろうか・・・?


僕自身も、この時点では、よく分からなかった。
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