媚薬と私
由紀子は元々、あまり自分の事を喋らなかった。
・・というより、聞き上手なのだろう。
本来は、年上である僕の方が、由紀子の話に耳を傾けなければいけないのに、
ついつい、自分の話をしてしまう。
だけどそれだけ、由紀子は話しやすい存在なのだ。
しかし僕は、由紀子の事について尋ねてみた。
「高藤さんは、新しい職場はどう?」
「えっと・・・
職員の人達ともやっと慣れて、楽しくやってますよ。」
「結構、飲み会とかも定期的にあって、それが私には苦手かな・・・笑」
「飲み会多いと、大変だよね。」
「人間関係には恵まれたと思うのですが、飲み会は気を使います・・。」
由紀子は笑顔で答えてくれたが、その笑顔は彼女の気づかいだろう。
海老のアヒージョとパンが運ばれてきた。
「飲み物何か飲もうか・・。」
僕はそう言って、由紀子にメニューを渡した。
由紀子はカシスオレンジがいいと言った。
僕はまたビールを頼んだ。
海老のアヒージョは、美味しかった。
二人とも顔を見合わせ、「美味しい!」と言った。
お互いの心が通った感じがした。