媚薬と私

駅に着き、改札を通り、ホームへ歩いた。


「私はこっちなので、ここで・・。」


「今日はありがとうございました。」


「ご馳走様でした。」


由紀子は爽やかな笑顔を見せながら、言った。


ここで別れだ。


由紀子との会話が楽しかっただけに、別れたくなかった。


しかしここは、あっさりと引こう。


「こちらこそ、ありがとう。」


お互い、手を振りながら、別れた。


ホームに着くと、丁度電車が着たので、飛び乗った。


23時を回っているというのに、大勢の人が乗っていた。


いや、この時間帯だからこそ、多いのだ。


ただラッキーな事に、椅子に座れたのだ。


僕はスマホを取り出すと、由紀子にメールをした。


「今日はとても楽しかったよ。」


「遅くなってごめんね。」


「帰り気をつけて。」


絵文字も一つ入れた。


由紀子に送ったメールは、すぐに既読になった。


そしてしばらくしてから返事がきた。


「こちらこそ、ありがとうございました。」


「久しぶりにお会いできて良かったです。」


「お仕事頑張って下さい。」


由紀子は、可愛らしいスタンプのイラストも送ってきた。


一緒に仕事をしている時では、こんな事は無かった。


由紀子も、職場が変わり、ある意味、僕とは対等な付き合いが出来ると思ったのかも知れない。


由紀子の絵文字が入ったメールとスタンプを見て、僕は嬉しくてにんまりとした表情になった。
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