最後の恋
今年最後の仕事が終わるまで、彼とは専務と秘書として仕事を乗り切った。


お互いに気まずさはあったけど、仕事中は彼もそれを顔に出すことはなかった。


別れ話をした二人の空気は微塵も感じない。


それどころか、彼と付き合っていた事実さえなかったかのようだ。


認めないと言った彼は頑なに態度を崩さない私にもうしびれを切らしたのか…今は元クラスメイトよりも遠いただの上司と部下になってしまった気がした。


今年最後の仕事を終えた私はエレベーターから降りエントランスに向かう足を不自然に途中で止めた。


入り口から紫乃が入ってくる姿が見えたからだ。


なぜ、彼女がここに?


バカな私は一瞬そう思ったけどすぐに…婚約者である彼に会いに来たのだと分かる。


私は彼女に気づかれないようにすぐ横にあった女性トイレの中へと身を隠すように入った。


こんなところに隠れて私…何してるんだろう。


目の前にある鏡には、情けない女の顔をした自分が映っていた。

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