最後の恋
今はもう何もない胸のあたりをぎゅっと握りしめた。


だけど痛みは和らぐ事はない…。


「杏奈…大丈夫?」


リビングに戻ってきた恵里の心配そうに伺う声が背後から聞こえた。


その声にハッとして俯いていた顔をあげ、手の力をそっと緩めた。


「…うん、大丈夫だよ。恵里は?もう遅いし、寝る?」


後ろを振り返り、明るくそう答えた。


「ううん、杏奈さえ大丈夫ならもう少し話さない?」


私の向かいのソファに深く腰を下ろした恵里がそう言って微笑んだから、「うん、そうだね。」と笑顔で答えた。


そこへ、永ちゃんを布団に寝かしに行ったタケも戻ってきた。


恵里の隣に座ると、空になっていた自分のグラスに恵里お手製の梅酒のソーダ割りを手慣れた様子で作っていく。
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