最後の恋
「それで、今は東京に戻ってきてるの?」

「うん…ずっと母と母の実家で暮らしてきたけど、母も去年亡くなったし。1周忌も済んで喪があけたからそろそろ戻ってもいい頃かと思って。」

「そうだったの…おばさん、亡くなったんだ。私…何も知らなくて…ごめんね。」

「ううん、そんなの知らなくて当たり前だよ。だから、気にしないで。」


こんな時でも、彼女が向けてくれる笑顔は優しくて…私は正面からそんな彼女の顔をまともに見ることが出来なかった。


「そういえば、この間の彼…本当にただの幼馴染だったんだね。誤解してた。」


彼女の誤解が解けているということは…そういう事なんだろう。


昨晩、あんな時間に一ノ瀬君の電話にもかけてるわけだし…


「あ…うん。この間は仕事で東京に来た彼と久しぶりに飲んでたの。まだ新婚さんで、もうすぐ子供も産まれるんだよ。ちなみに彼の奥さんも私の親友で幼馴染。」

「親友か…私も、杏奈にそう言われる人になりたかったな。」


そう言って寂しそうに笑った紫乃の言葉に胸がズキンと痛んだ。


彼女と向き合えた後、私たちの関係はどう変化していくのだろう。
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