レス・パウダーレス

わたしは一体いつ、女の子から女になったのだろう。

自分の姿と対面しながら、そんなことを思った。

いつ、覚えたのだろう。計算すること。仕草を作ること。演技をすること。

笑顔を量産して、大人の手順をなぞって、溺れて、入られることを許して、声を上げて、ふと、たまに。

自分がすごくずるくて、汚いもののように思えてしまう時がある。

取り戻せないものを、いくつも失くしたように感じる。

パウダーで塗りこめて、抑え込んで。

偽ったわたしに注がれる形だけの愛は、わたしをいっそう奥底に沈める。そんな気がするの。


いつの間にか溜まっていたバスタブのお湯に、身体を浸す。

温度が、熱すぎたかもしれない。皮膚がジンジン痛んで、少し辛い。

何も隠さず、何も塗っていなかったあの頃が、ひどくまぶしい。

真っすぐだけで生きていた。話していた。

真っすぐな気持ちで、手を繋いだ。

渡された、飲みかけのペットボトル。

口をつけるのすら顔が火照った、真夏のこと。


「ーーっ、」


ーーガラリ。

ぐっとくちびるを噛んだと同時に音がして、摺りガラス仕様の扉が開いた。

思わず、ヒュッと息を呑む。

扉の向こうから現れたのは、三口さんだった。

わたしはおどろいて。でも、三口さんもおどろいていて。


「……なにしてるんすか」


寝起きのかすれた声で、彼はわたしに聞いた。

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