レス・パウダーレス
わたしの心はいつの間にか、決して元には戻すことができない、左右非対称のかたちに創り変えられていった。
――だから。
ずっと目で追っていた彼が、ある日、わたしを見て。
わたしの好きな、ズンと沈む声で。
「付き合ってほしい」
そう告げてくれた時、わたしはおどろいて、嬉しさのあまり泣き出してしまった。
自分でびっくりするくらい、涙がとめどなく溢れてきて、彼の、首の後ろを触る仕草を目の前で見て、また泣けてきた。
声は出なかったけれど、わたしはうなずいた。
首がポキリと折れてしまうくらい、深く、何度も。
付き合うことになってから、わたしたちはメールの交換を始めた。
それまではお互い、アドレスも知らなかったのだ。
毎日やりとりをすることで、一気に距離は縮まっていった。
電話もした。部活終わりに待ち合わせて、学校から一緒に帰った。
メール。電話。直接の会話。
わたしたちはどのツールでも、いつだって一生懸命に話した。
お互いのことを知りたい知りたいって、欲するみたいに。
そうして知り得た彼の新しい一面は、わたしを幸せな気持ちにしたし、となりで響く彼の声は、いつだってわたしの心臓を逸らせ、高ぶらせた。