レス・パウダーレス

一緒に帰るのが、定番になってきた頃のことだ。

いつものように、となり同士で並んで話をしながら歩いていた時、彼が、ゆっくりとわたしの手に触れてきた。

言葉が止んで、代わりに、手に力が込められていって。キュッと、強く握られたとき。

わたしはうまく息ができなくなって、瞳はグラグラと揺れて、また泣き出しそうになってしまった。

指から、手のひらから、彼の精一杯が伝わってきた。

初めて手を繋いだ、思い出だ。

ドキドキと速いスピードで脈打つ鼓動が、わたしにもうつって。

つながった場所から、好きの気持ちが、じんじんするくらい、流れてきて。


……ああ、わたし。あの時。

女の子に生まれて良かったなぁ。そう、思ったんだっけ。


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