レス・パウダーレス
*
°。
三口さんと交わすキスは、いつだって白ワインの味がした。
ブレのない、お決まりの味と流れだ。レストランで食事をして、小一時間ほど談笑してから、わたしたちはホテルの一室になだれ込む。
身体を洗うことはしない。化粧を落とすこともしない。
忙しない。始まりはとても性急だ。
なのに行為の一つ一つは、とてもゆっくりだった。
指の一本一本。まとめずに分けて彼の温度が触れていくから、わたしの指は五本あるんだ、なんてことを再認識してしまうくらいに。
まだ数回だけれど、いつも思う。
三口さんとのセックスは、小さな波のようだ。
決して無理やり、わたしを呑み込んだりしない。意志があれば、いつだって抗える。
奪われる感じがない分、自分で選択させられている気がする。
わたしはこの行為に、自分から手を伸ばしている。
自ら差し出して、鼻にかかった高い声を上げるために、自ら口を開く。
「ーーあ」
声帯が震える。うごめくわたしの下で、シーツが波立つ。
白い波。もがいて動くほど、どんどん沈んでいくね。
気がつけば海の底。
繋がった状態で言われる「愛してる」は、いつもどこか遠い。
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三口さんと交わすキスは、いつだって白ワインの味がした。
ブレのない、お決まりの味と流れだ。レストランで食事をして、小一時間ほど談笑してから、わたしたちはホテルの一室になだれ込む。
身体を洗うことはしない。化粧を落とすこともしない。
忙しない。始まりはとても性急だ。
なのに行為の一つ一つは、とてもゆっくりだった。
指の一本一本。まとめずに分けて彼の温度が触れていくから、わたしの指は五本あるんだ、なんてことを再認識してしまうくらいに。
まだ数回だけれど、いつも思う。
三口さんとのセックスは、小さな波のようだ。
決して無理やり、わたしを呑み込んだりしない。意志があれば、いつだって抗える。
奪われる感じがない分、自分で選択させられている気がする。
わたしはこの行為に、自分から手を伸ばしている。
自ら差し出して、鼻にかかった高い声を上げるために、自ら口を開く。
「ーーあ」
声帯が震える。うごめくわたしの下で、シーツが波立つ。
白い波。もがいて動くほど、どんどん沈んでいくね。
気がつけば海の底。
繋がった状態で言われる「愛してる」は、いつもどこか遠い。