レス・パウダーレス
行為の後の行動は、決まっていた。
わたしが先で、三口さんが後。順番にシャワーを浴びて、きれいな身体になってから、きちんとシーツを整えて眠る。
でも今晩は、そうじゃなかった。
三口さんはくしゃくしゃなままの枕に右頬をもたれさせて、寝息を立て始めたのだ。
スウ、スウ、と規則的なリズムで聞こえる寝息に、わたしは不思議な気持ちを覚えた。
こんなふうに、自然に眠りに落ちた三口さんを見るのは、初めてだった。
彼はわたしなんかよりずっと、疲れていたのかもしれない。そう思った。
会社では課のリーダーをしているらしいから、派遣や平社員より、やるべきことはずっと多いはずだ。忙しい、なんて、本人の口から聞いたわけじゃないけれど。
食事中に交わす会話は、当たり障りのないもの。
お互いが笑顔でいられる範囲のことばかり。
わたしたちはまだ、グチなんかを十分に吐き出しあえる関係を築けてはいない。
三口さんのことを好きじゃないのか、と聞かれれば、そういうわけでもないんだと思う。
本当に何も湧いてこない人と、身体を重ねたりはしないから。
ただ、幼かった昔とは、違うということ。
一緒の時間を過ごす中で好きに気付いて、膨らませて、溢れそうで、タプタプになった状態で、付き合い始めるわけじゃない。そういうこと。