溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「ちょっと、本気出すから。そんな男のキスなんて、全部忘れさせてやる」
唇の上でささやかれた言葉の意味を理解したのは、重なるだけだったキスが、深いものに変わってすぐのこと。
今まで散々されていたキスは、かなり手加減されていたのだと初めて知った。かなり慣れたつもりだったのに、主任の唇と舌に翻弄されて全然ついていくことができない。
「ん、んん。と……ご、まっ……て」
ほとんどないキスの合間に待ってと必死に訴えても、待ってはくれずに容赦なく私を追いたてる。
ーー食べられる。
そんな表現がぴったりくる。すべてを奪いとられるような、そんなキスがあることを、私は今まで知らなかった。
「……はっ、ふ、あっ」
唇が離れた頃にはすっかり息があがってて、身体が熱くなっていた。舌が痺れて甘く疼いて、許容を超えているくせに、なぜだかもっとしてほしいと思ってしまう。
「沙奈、かわいい。沙奈を俺にちょうだい。全部俺のものにしていい?」
身体に力が入らずクタリと、ベッドに沈み込む私の耳に、低く艶のある声で主任がささやく。
その声にさらに力が抜け、言葉の意味が頭に入ってこない。
「ん、あ……ん? んん?」
呆けている間に、彼の手が浴衣の中に忍び込んできた。その手の怪しい動きに、キスで蕩けた頭が正気を取り戻す。
「ぎゃっ! わ、あ、ダメ!」
大きな手を掴んだ私に、彼は不服そうな顔で舌打ちをした。