溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「流されてくれていいところなんだけど」
「い、いやいや。だって私と東吾は……えっと……そう、友達! 友達でしょ?」
「俺、プロポーズしたよね。なかったことにされるのは、さすがにショックなんだけど」
「そ、そうじゃなくて。だってそんな、友達からいきなりプロポーズって……」
「なにを今さら。もう二ヶ月近く一緒に暮らしてるのに。本気で友達だと思ってる? それに、ただの友達はキスなんてしないでしょ」
鼻で笑われてうっと言葉に詰まる。たしかにそうだ。今の同棲状態を、おかしいと思いながらも受け入れてきたのは私だ。
でも、キスは主任が言い出したことなんですけど。
「だって、それは報酬で。言い出したのは、東吾でしょ」
「いくら報酬でも、好きでもない男にキスされたら気持ち悪いと思うんだけど。沙奈、俺のキス好きだよね」
指で唇をなでられて、火がついたように顔が熱くなった。なんか、すごく恥ずかしい。
なんだろう、この敗北感。彼の言う通り、たしかに私はこの人のキスが好きだ。
無意識のうちにもっとしてと、おねだりなんかもしていたかもしれない。
「ま、逃す気はないから。遅かれ早かれ俺のものだけどね。どうする?」
クスリと笑った彼に、ゾゾッと肌が粟立つ。
あれ、おかしいな。私、結婚したくないっていう話をしたんだよね。なに、その選択肢がない感じ。