溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「う、うん。もうあとは薬を使って痛みのコントロールをしていくしかないって言われてる」
「考えたくないだろうけど、もしものときは東京の病院に入院したほうがいいと思うんだ。緩和医療っていうのがあって、入院するならそれをやっている病院がいいと思う」
それは、癌の末期患者のケアをやってくれる病院だそうだ。できるかぎり痛みを取り除いて、その人がその人らしく最期を迎えられるように看護してくれる。
付き添いもでき、面会時間の制限もないうえに持ち込みも自由。料理が作れるようにキッチンもあるらしい。
「できれば……そうしたい。なるべく苦しんでほしくないし、そばにいたい」
「そうだよな。うちの祖母も、俺が高校生のときに膵臓がんで亡くなったんだけど、緩和ケアの病院に入院してたんだ。旅行から帰って落ち着いたら、おじいちゃんに話をしよう」
「うん。東吾、お年寄りに慣れてると思ってたけど……もしかして一緒に暮らしてた?」
「ああ、うちは家族で介護してるから。今も、祖父のことを自宅で介護しているよ」
ああ、だから慣れているのか。じいちゃんへの接し方を見ていればわかる。きっと主任も、私のお仲間だ。
「東吾も、おじいちゃん、おばあちゃんっ子?」
「うん、そう。両親は、忙しかったからね。仕事のノウハウも、祖父に教わった。沙奈のことも、きっと気に入るだろうな」
やっぱり、そうなんだ。まあ、彼のおじいちゃんは桐島フーズの会長なわけだから。うちののほほんとしたじいちゃんと一緒にするのは申し訳ない気もする。
でも、なんだか急に親近感湧いちゃうな。