溺愛御曹司は仮りそめ婚約者

「あと、結婚式のことなんだけど……あれ、本気だから。そしてもう、沙奈に拒否権はない。なぜならば、仕事が絡んでいるからね」

「へ? し、仕事?」

マヌケな顔で首を傾げる私に、彼はにっこりと微笑む。

最近……いや、正しくは今日気がついた。この笑顔は、油断ならない。

いったい、なにを企んでいるのだろう。さっき感じた親近感が、あっという間になくなった。

「レストランで、小規模な結婚式もできるようにしようと思ってるんだ。病院が近くて治療食もある。闘病中の家族に結婚式を見せたいという人も、きっといる。価格もかなり抑えるから、一定の需要はあると思う。小松さんにはすでに結婚式のコース料理の企画を頼んであるから、来週からは沙奈も加わって」

私と一緒に治療食のメニューの企画に関わっている先輩の名前が出て、びっくりする。

突然すぎるんですが、いつからそんなこと考えていたのだろう。ていうか、チームのみんなは知ってるの?

「もしかして、知らなかったのって……」

「うん、沙奈だけ。俺が箝口令を敷いたからね。ちなみに、俺と沙奈は結婚式のパンフレットのモデルをするから。それが一ヶ月後。撮影は入るけど、家族も呼んで普通に結婚式をする」

「はあ!? モ、モデル?」

「モデルを雇う予算ももったいないし、おじいちゃんに沙奈の花嫁姿も見せてあげられる。一石二鳥だろ? 大丈夫だよ、顔は出さないから」

そういう問題じゃないんですが。なにが一石二鳥なのか、全然わかんない。

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