溺愛御曹司は仮りそめ婚約者


「大学のとき、使う路線が一緒だったんだよね。偶然だけど、よく同じ車両に乗ってた。沙奈、よくお年寄りとか子供連れの人に座席譲ったり話しかけたりしてたでしょ。笑顔がかわいくて、優しい子なんだなって思っていつも見てた。声をかける勇気は出なかったんだけどね。なんか、ナンパとかしても相手にされなそうだったし」

う……。しなかった、かも。大学に行かせてもらってるうちは、恋愛に現を抜かしてる場合じゃないと思っていた。

「まあ、その頃はやたら目がいくな、くらいでどうのこうのしたいとは思ってなかった。普通に付き合ってる彼女もいたしね。だから、入社式で沙奈を見たときには本当に驚いた。柄にもなく運命かな、なんて思ったりね。すぐに話しかけたかったけど、部署も違うし、俺は同期の飲み会にも呼ばれないからなかなか機会がなくて。だから、企画部に異動してくるって聞いたときは、やっと話せると思ってうれしかったな。まあ、なんでか嫌われてて距離を詰める隙もなかったんだけど」

ジロッと恨みがましい目を向けられて、視線を逸らして薄ら笑いでごまかす。だって、感情が見えなくて気味が悪かったんだもん。


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