溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「ずっと見てたよ。沙奈が、一生懸命ひたむきにがんばってるの。俺のことが嫌いなのに、話すときは真っ直ぐ目を見てくれるのがうれしかった。俺自身を見てくれてるような気がして。……まあ、実際は不気味と思われてたみたいだけど」
嫌味っぽい口調に、ヒクリと頰が引きつる。
あれ? 私、そんなこと一言も言ってないよね? なにこの人、エスパー?
「なんで、そんなこと知ってるの?」
「高橋に聞いた。俺と沙奈が付き合ってるというのが、とても衝撃的だったみたいでね。沙奈が、俺のこと不気味だって嫌ってたのにって、ポロッと。さすがにショックだったな。好かれてないことには気づいていたけど、ずっと気になってた子にそんなふうに思われてたとはね」
高橋、あの男……余計なことを。あとで、絶対ぶん殴る。チラッと彼の顔色を伺えば、悲しそうな目を向けられてズキッと胸が痛んだ。
「ご、ごめんなさい。でも東吾、いつも無表情でなに考えてるかわからないし。なんか人間味がなくて気持ち悪かったんだもん」
「うわ、ひどい。バレたからって、遠慮がないな。俺に話しかけるとき、顔ひきつってたよね。たしかに元々、感情を表に出すタイプではないけど、入社したばっかりの頃は、もう少しマシだったと思うよ。でも、まわりが敵だらけだったから、隙を見せられなくて。それを気持ち悪いと思われてたとか、すごいショック」