溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
ああ、なんて美味しいだし巻き卵なんだろう。じいちゃん、だし巻き卵が大好きなんだよな。これ、食べさせてあげたいな。
こうしている間にも、じいちゃんと過ごせる日々が確実に減っていることに切なさが募って、涙が出てくる。
だし巻き卵を咀嚼しながら、いきなり涙をこぼし始めた私に桐島主任はぎょっとしたように目を見開いた。
「な、どうしたんだ? 俺、変なこと言った?」
おお、あの桐島主任が動揺している。すごいレア……って、動揺させているのは私か。
もしかしたら、これからじいちゃんのことで休まなきゃいけないこともあるだろうし、桐島主任にはこのことを話しておくべきかもしれない。
「すみません、急に。実は先日、祖父に肝臓がんが見つかりまして。余命半年と医師から告げられたんです」
「……そう、だったんだ。ごめん、こういうときに、なんて声を掛けていいかわからないけど。それは仕事どころじゃないよな」
ハンカチで涙を拭きながら、桐島主任はやっぱり優しい人だなと思う。こういうとき、下手な慰めの言葉をかけられるより、私は正直に言ってもらった方がずっといい。
「仕事、大丈夫か? 今回のプロジェクトチームのメンバーに、浅田さんを選んだのは俺なんだ。もし、負担になるなら……残念だけど……」
「い、いえ! それはがんばりたいと思っています。きっと、祖父もそう言うと思いますから」
せっかくのチャンスだし、私にはそのプロジェクトチームでやりたいこともある。じいちゃんのことも大切だけど、仕事だってがんばりたい。