溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
そうして次の週には、本当にご両親は私の実家まで挨拶にきてくれた。
じいちゃんはそれはもう、大喜び。主任ファンのご近所の方も、総出でおもてなしをしてくれた。
田舎のおもてなしを、主任のご両親は大層喜んでくれた。そこまではよかった。
問題は、そのあとだ。なんと、主任はその場で未記入の婚姻届を出したのだ。
「時期を見て入籍するつもりでいるから、みなさんの前で書きたいと思って。さあ、沙奈、書いて」
にっこり笑ってボールペンを差し出してくる主任が憎たらしくて仕方なかったが、ニコニコしながら見守るみなさんの手前、書かないわけにもいかなかった。
証人の欄に主任のお父さんとじいちゃんの名前が入り、私がしぶしぶ記入したそれは、現在彼が保管している。
そして、その次の日から、なぜか彼は私がベッドを出る気配に異常に敏感になった。
朝、ベッドから出ようとすると引き止められるのは前からなのだが、まったく抜け出せなくなってしまった。
長い腕と足を駆使してがんじがらめに抱きすくめられて、まったく身動きがとれない。
それから彼の目が覚めるまでキスをされ、身体のあちこちをなでられる。
散々ドキドキさせられて、ベッドを出たあとも過剰すぎるスキンシップを受けて、もう朝からぐったり瀕死状態だ。
さらに、主任は私と一緒に出勤するようになり、社内での私への態度が明らかに変わった。
なんというか、近いのだ。上司と部下の関係にしては、距離感が近すぎる。
今まで、同僚と……特に女子社員とは一線を引いていた彼のその変化は、劇的だった。
彼が急に態度を変えたおかげで、私と主任が付き合っているという噂が社内に流れ始めている。プロジェクトチームの中では、すでに周知の事実だ。
結婚式も、いつも間にか私たちの結婚式がメインで、パンフレットの撮影がついでということになっている。
ほんの二週間足らずで完全に外堀を埋められてしまい、釈然としない気持ちでジロッと目の前の人を睨む。