溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「待ってるって言ったのに、ひどい」
「待ってあげてるよね、入籍。そんなこと言うなら婚姻届、今すぐ出そうか?」
「ダ、ダメ。そういう意味じゃなくて、会社でのあの態度はどうかと」
「なかなか好評なのにな。自分を取り繕う必要がなくなっただけだよ。沙奈がいてくれるからね。沙奈がいれば、どんなことでも乗り越えられる」
ストレートな言葉に、顔が赤くなるのが自分でもわかった。この人、こういうところがずるい。
最近、眼鏡をしなくなったのは、もしかして……。うわ、なんか恥ずかしい。
「そ、そうじゃなくて。私との距離が近すぎる気がする」
「一応、節度は守ってるつもりだよ。でも、しょうがないと思うよ。好きな子がそばにいたら、どうしたって触れたくなるだろう?」
それを体現するようにテーブルに置いていた左手をなでられて、かあっと身体が熱くなる。
「で、でも主任。……まわりの目も怖いですし」
主任狙いだった綺麗どころの女性たちの目が恐ろしい。
今のところなにも言われないけど、すれ違うたびに睨まれている気がしてビクビクしてしまう。