溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「佐山専務、あなたは次期社長候補なのでしょうが、それに相応しい器とは思えませんね。あなたのいう親の力を借りれば、栗山食品を潰すことくらい簡単なことなんですよ」
最低男が息を飲むのがわかった。思わず顔を上げると、主任は冷たい笑みを男に向けている。
そのあまりの冷たさに、思わず身をすくめた。
「うちにとっては、そちらと契約を切ることなんて痛くも痒くもありませんが、そちらにとってはどうですかね? 取引先にそちらとの契約をしないように圧をかけることも可能だ。そうなったらどうなるか、わかりますよね?」
「と、東吾……なにもそこまで……」
その言葉の意味に、ゾッとする。抗議の意味でスーツの胸のあたりを引っ張っても、彼は冷たい目を男に向けたままだ。
「わかりませんか? 気に食わないが、あなたは沙奈に守られている。五年前も、今も……。でも俺は、沙奈みたいに優しくない。沙奈を守るためなら、あなたのところの何百人という従業員が路頭に迷おうと関係ない。潰してあげましょうか? あなたごと」
口角を上げ、口元だけで笑った主任は、とても冷酷な顔をしていた。本気でそうしかねない表情に、ブルブルと身体が震える。
そんな私を見下ろした主任の表情が和らいだ。
大丈夫、というように私の肩をなでて、今や顔面蒼白になっている男を真っ直ぐに見据える。