溺愛御曹司は仮りそめ婚約者

「人の上に立ちたいのなら、ご自分の行動に責任を持ったほうがいい。何百という人間の生活がかかっているんだ。その重さ、わかりますか? 背負う覚悟が、あなたにありますか?」

ああ、この人は、もうそういう覚悟を持っているんだ。何百どころじゃない。何千人という人の人生を背負ってる。

人の上に立ちたいわけではなく、立たなければならないことをわかっている。

全部受け入れて、強い眼差しで前を向く主任を、かっこいいと思った。

顔の造形の問題じゃなく、人間としてかっこいい。最低男は、主任の気迫に完全に飲まれている。

最初から勝負になるわけがない。人間としての器が違いすぎる。

「……奥さんと、お子さんを大切にしてあげてください。もうお会いすることもないと思いますが、お元気で。行こう、東吾」

どうか、間違いに気づいてほしい。守るべきものを、守ってほしい。

そう思いながら、主任の手を握って歩き出す。

振り返ることは、しなかった。ずるずると引きずっていた過去を、やっと清算できた気がした。


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