溺愛御曹司は仮りそめ婚約者


「じいちゃん、今日はやたらに頭が光ってるね」

日頃の行いがいいせいか、空は見事な快晴。燦々と輝く太陽の下で、いつにもましてじいちゃんの頭が輝いている。

「わかるか? 写真撮るだろうからな、よーく頭磨いといたんだ。少しでもよく映りたいべよ」

そう言って照れくさそうにハンカチで頭を磨くじいちゃんに、私と介添人のスタッフさんが同時に吹き出した。

「ちょっ、やだ。もう、じいちゃんてば。照明いらずだね。でも、おかげで緊張がほぐれたよ」

「そら、えがった。沙奈が少しでも綺麗に見えるようによーく照らしてやっから。じゃ、行くべ。東吾くんが、待ってっと」

「うん。よろしくね、じいちゃん」

「では、開けますね」

私たちが一緒に携わって作り上げた、レストラン『Mio tesoro (ミオ テゾーロ)』の扉が開いた。

ベールの向こうに見える景色に、目を見開く。

室内は写真で見た光景とは違い、すっかり結婚式仕様になっていた。

大きな窓からは、緑の多いガーデンが一望でき、そこには東屋と小さな鐘が建てられている。

新郎席側には、主任のご両親と本部の偉い方々。うちの部署と開発部、製造部の部長、課長の姿もある。

一方、じいちゃんしか家族のいない新婦席にはメニュー開発のプロジェクトチームのメンバー。

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