溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
なにを隠そう、レストランの中を結婚式仕様にしてくれたのはこの人たちだ。彼らにもしっかり“時期を見て入籍予定”と、説明してあるそうだ。
『御曹司と平凡女子の恋を応援する会』の会員でもあるメンバーたちは、それに狂喜乱舞し、泣く人までいてちょっぴり引いた。
ちなみに彼らは、このあとの試食会も兼ねた会食の給仕係もすることになっている。主任いわく、『経費削減のため、使えるものは最大限に使う』だそうだ。
そしてバージンロードの先には、白いタキシードを着た主任がいた。
うわ、さすが、かっこいい。真っ直ぐに私を見つめて目を細める主任に見とれそうになりながら、じいちゃんと腕を組んで一歩ずつ進んで行く。
最近、少し痩せたじいちゃん。私をずっと見守ってくれた、たったひとりの大切な家族。
じいちゃんと歩く大切なこの時間が、少しでも長く続くようにゆっくりと歩みを進める。
主任はそれを、私を見つめながらじっと待っている。
主任の前まで来ると、彼は私の方に手を差し出した。じいちゃんの手が、私の手を取り差し出された彼の手に乗せる。
「東吾くん、沙奈のこと……よろしくお願いします」
「はい、大切にします」
少しの間、主任を見つめていたじいちゃんは、安心したように微笑んだ。主任もじいちゃんに微笑み返して、私に視線を移す。
目を細めて私を見つめた彼に手を引かれて、司式者の前に立った。
賛美歌が流れ、それから司式者が聖書の中の『夫婦の務め』を朗読する。
そのあとはいよいよ、結婚式のクライマックス。『結婚の誓約』だ。