溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「桐島東吾さん。あなたは浅田沙奈さんと結婚し、妻としようとしています。あなたは、この結婚を神の導きによるものだと受け取り、その教えに従って、夫としての分を果たし、常に妻を愛し、敬い、慰め、助けて変わることなく、その健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しきときも、死が二人を分かつときまで、命の日の続く限り、あなたの妻に対して、堅く節操を守ることを約束しますか?」
「はい、誓います」
主任の迷いのない返事を聞きながら、次は自分の番だと緊張してくる。
「浅田沙奈さん。あなたは桐島東吾さんと結婚し、夫としようとしています。あなたはこの結婚を……」
滑らかに話す司式者さんの声に、緊張がピークに達する。声、裏返ったらどうしよう。
人の結婚式だと、なんて素敵なのだろうとうっとりしているところだが、当事者となるとそうもいかない。
感動的な場面なはずなのに、それを味わう余裕はない。
「……あなたの夫に対して、堅く節操を守ることを約束しますか?」
あっ、出番だ。緊張で喉がカラカラになっていることに気がついて、コクリと唾を飲み込む。
そのせいで、微妙な間ができてしまった。
「……は、はい。ち、誓います」
声が裏返りはしなかったが、慌てて口にしたからどもってしまった。
主任がなんだ今の間は、と言いたげな顔で見つめてくるのを、緊張してるんだから仕方ないでしょ、という顔で見返す。
ちゃんと言えたんだから、多少のミスは多めに見てほしい。