溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
でも、高橋はダメだ。前はすごく居心地のいい関係だったのに、長年付き合っていたという彼女と別れてからちょっとその関係が崩れてきてしまっている。
「高崎はちょっと。彼女と別れてから、なんか口説かれるようになって。しかも、やたら上から目線で! 恋人役なんか頼んだら変に勘違いして、本物の彼氏になってやるとか偉そうに言われそうで嫌です」
本当に上から目線で、「仕方がないから、俺が枯れたお前に恋愛の良さを教えてやる」なんて言われて迷惑しているのだ。
しかも、しつこい。そんなこと私は望んでいないのに。男女の友情は成立する派だったのに、あいつのせいでやっぱり成立しない派になってしまった。
「なるほど。……なら、俺がなろうか? その、偽物の恋人役」
「え!?」
思いもよらない提案に、驚いて勢いよく桐島主任のほうに顔を向ける。静かに私を見つめている彼は、至って真面目な顔をしている。
「今、彼女もいないし。社運を賭けた一大プロジェクトを前に浅田さんが仕事に集中できないのも困るしね」
う、嘘。桐島主任が、偽の恋人役になってくれるの? ほんとに?
信じられない気持ちで目を見開いたまま固まっている私の顔を、主任が覗き込んでくる。