溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
ウェディングドレスのときは髪型もかっちりまとめた王道スタイルだったが、カラードレスでは雰囲気を変えて髪を下ろし花冠をつける。
メイクもふんわりナチュラルに。チークの色と口紅の色を変えただけで大分印象が変わるものなんだなと、鏡の中の自分を見て感心してしまう。
「うん、とってもよくお似合いです。新婦様はかわいらしいお顔立ちなので、こういう柔らかい雰囲気のものがとても合いますね」
「ほんとに! 新郎様も惚れ直すでしょうね。早速、お呼びしてきますね」
「私も、少し外させていただきます」
介添人さんとメイクさんが部屋を出て行き、ひとりになってふうっと息を吐く。このあとはガーデンで撮影をして、それから試食会だ。
今頃は、プロジェクトチームのメンバーたちがキッチンで奮闘しているだろう。
手伝えないのが、非常に心苦しい。あとでなにかお礼をしようと思っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「はーい」
主任と介添人さんが来たのだと返事をすると、静かにドアが開いた。中に入ってきた人物を見て、ハッと息を飲み思わず後ずさる。
そんな私を見て、怖い顔をして部屋の中に入ってきたその人……森田瑠璃子さんは口元だけで笑った。
「そんなに怯えないでちょうだい。……まあ、とてもかわいらしいわね。少し、お話してもいいかしら」
言葉こそ伺うようなものだが、口調は私の都合など関係ない。それと決まっているかのようなものだった。
高圧的なもの言いと視線に、この人はやはりお嬢様なのだなと思う。人が自分に合わせるのは、この人にとって当たり前のことなのだろう。