溺愛御曹司は仮りそめ婚約者


じいちゃんの言う通り、こんな人にここまで思ってもらえるなんて、私は果報者だ。

「ん?」

幸せに浸っているところを、肌をなでる東吾の不穏な手の動きが邪魔をする。

「と、東吾、なにしてるの?」

「沙奈に触って、キスしてる」

「そうじゃなくて……んっ」

大胆になった手の動きとキスに、流されそうになりながらも必死に抗うと東吾が小さく舌打ちをして唇を離す。

「流されてくれればいいのに。まあ、そういうところもかわいいんだけどさ。沙奈、これ見て」

「うん?」

差し出された携帯の画面には、また絵馬。

見覚えのある字で、『ひ孫の顔が見たい』と書いてある。

「おじいちゃんの願い、叶えてあげなきゃと思わない?」

ニッコリ笑った東吾に、顔が引きつる。この笑顔は、よくない。主に私に、よろしくない。

「思う……けど。あ、そうだ。部長と課長に入籍の報告してないし。仕事に行ったほうがよくない? 身体は大丈夫だし。東吾のご両親にも……」

「ああ。部長たちにも親にも報告してあるよ。三ヶ月前から沙奈と結婚するって言ってあるから、やっとかって喜んでたよ」

彼の言葉に私の動きがピタッと止まる。三ヶ月前って……。契約したばかりの頃っていうこと?

ふと、じいちゃんの病気のことを報告したときの部長と課長の反応を思い出す。そういえば、やたら桐島くん、桐島くん、と言っていた。

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