溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「まあ、お姫様抱っこはこんな感じ。お互いにひとつ、経験値があがったね」
ああ、なるほど。例の経験値のためのお姫様抱っこだったのね。
別に経験したくなかったけど、確かにドキドキはしましたね、はい。
「次は、腕枕でもする?」
主任が私の隣に横になって、私の頭の下に腕をいれる。そのまま引き寄せられて、すっぽりと主任の腕の中に納まった。
なに、このフィット感。なんか、すごくしっくりくるんですけど。
「すごい。初めてしてみたけど腕枕って、こんなにぴったりフィットするもの? 俺と沙奈って案外相性いいかもね」
「い、いや。なんかどこから突っ込んでいいかわからないのですが。私、ここで寝るんですか? それに腕枕が初めてって、嘘ですよね?」
「うん、ここで寝てください。セミダブルだし、うちに客用の布団なんてないから。このまま打ち合わせして、眠くなったら寝ちゃえばいいよ。あと、腕枕は本当に初めてしたから。今までそういうベッタリした付き合いはしてこなかったから……なんて言ったら、また沙奈に誤解されそうだな」
「だって、しゅに……東吾は、モテますよね?」
「んー……。まあね、モテるよ。でも別に、俺自身を見てくれてるわけじゃないから。『桐島』の名前に釣られてるだけ。彼女たちにとっては、俺はそのおまけ」
「そんなことは……ありますね。だって私も、家とか車見て、さすが御曹司! とか、思っちゃいましたもん。でも、それも含めて、桐島東吾という人ですよね。まあ、主任の仕事ぶりを知っている私としたら、素晴らしい“おまけ”ですよね。下手したらメインの商品より格上商品です」
お世辞にも、「そんなことはないですよ」とは言えなかったが、それは私の本音だった。
彼が“おまけ”なら、桐島の名前さえも霞んでしまいそうだ。それくらいの功績を、この人は残しているのだから。