溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
私の言葉に目を見開いて呆然としていた主任が、ぎゅうっと私のことを抱きしめた。それからぶるぶると震え始める。
え、なに? もしかして泣いてる?
「……くくっ、あははっ。なにそれ、俺のこと買いかぶりすぎじゃない? あー、面白い。そっか、沙奈の中では桐島の名前より俺の方が上なのか」
あ、なんだ。泣いているのかと思ったら、笑いをこらえていただけか。
「だって、どれだけ利益上げてると思ってるんですか。主任が企画した商品、どれも売り上げトップになってるじゃないですか」
なぜか主任は笑っているを超えて爆笑しているが、本当のことだ。
冷凍食品業界で、シェア率二位だった桐島フーズが一位にのし上がったのは、桐島主任が入社して企画の仕事をバリバリするようになってからなのだから。
「沙奈がそう思ってくれてるなら、そう卑屈にならなくてもいいか。そんなわけで俺ってさ、案外面倒な男なんだよ。こんなんでがっかりした?」
「いえ。人間らしくて大変いいと思います。逆に親近感がわきました」
「そっか。なら、よかった。こんなふうに、素の自分を見せられるのは……沙奈が初めてかもしれないな」
「そうなんですか? じゃあ、お友達になりましょうか。あ、そう思えば敬語もやめられそう」
前なら桐島主任とお友達になるなんて考えられなかったけれど、本当の姿を知った今ならそうなれそうだ。
私の提案が意外だったのか、主任はしばらく目を丸くして私の顔を見ていた。それからふっと口元を緩ませて、なんだか複雑な顔をする。