溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「朝ですよー、起きて! 東吾ー、起きてー!」
肩を揺すって起こしても、その目はまだ開かない。逆に、みの虫のようにモゾモゾと布団の中に潜ってしまう。
「もうちょっと」
「ダメダメ。起きて、起きて!」
「あと五分……」
「そんなこと言って。五分で起きた試しがないでしょ。ほら、起きて」
「起こし方が違う。だから起きない」
いやいや、なにを言ってるんでしょう。あんなの無理だから。
たしかにお願いされましたよ。『優しくキスして、耳元で東吾、起きてってささやいて』と、真面目な顔でお願いされました。
ですがね、そんなの私にとって羞恥プレイでしかありませんから。そんな恥ずかしいことができるわけがない。
「いや、無理って言ったよね。もう、いい加減に……きゃあっ!」
布団を引き剥がそうと手を伸ばすと、その手を掴まれて布団の中に引きずり込まれる。
「キスしてくれないと、起きない」
低く掠れた、甘えるような声にドキッとする。この人のこういうところ、ずるいなぁ。母性本能くすぐられまくりだ。
「沙奈、キスして」
言う通りに唇を重ねると、「もっと」とせがまれて抱きしめられて、何度も唇を重ねる。
「少しぎゅってして」
甘えるような声で耳元でささやかれて、顔が赤くなるのがわかる。もう、朝からドキドキして仕方がない。
だけど、ここである程度これに付き合っておくと、洗面所や食事中に寝てしまうことがない。
そのことを知っているから、ある程度言うことを聞いておく。