溺愛御曹司は仮りそめ婚約者

毎日食卓に並ぶぬか漬けを、意外にも彼はとても気に入ってくれている。

もう、完全に同棲しているカップルだ。食生活が適当だったり、寝起きが悪かったり……プライベートの主任はなかなか手がかかる。

そんな主任の世話を焼くことが、嫌ではないから困ってしまう。むしろ誰も知らない彼の姿を自分だけが知っていることを、私はうれしく思っている。



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主任の家から、会社まではたった二駅。通勤が半分以下の時間になったことは、とても助かっている。

それが、私が主任との同居生活を受け入れている一番の理由だ。そう、それが一番。

通いなれた十二階建てのビル。ここの三階から八階に、桐島フーズの冷凍食品事業部だけが入っている。

エレベーターに乗り、自分の部署のある五階で降りて、フロアの一番奥まで進む。

IDカードでセキュリティを解除して、まず向かうのは更衣室。

自分のロッカーにコートと鞄をしまってから自分のデスクに座る。

まだ時間が早いからか、出社している人は少ない。パソコンの電源を入れたところで、誰かが私の肩を叩いた。

「浅田、おはよ」

そこにいたのは、同期の高橋隼人だ。甘い系の整った顔をしているが、長めの茶色い髪といい雰囲気といい、なんともチャラい。

硬派な雰囲気の桐島主任とは、正反対だ。

「なんだ、高橋か。おはよう」

わざとそっけない態度をとって、起動したパソコンの画面に視線を向ける。朝からこいつに絡まれるなんて、ついてない。

私の右側の席に我が物顔で座った高橋に、心の中でため息をつく。君の席はここではありませんよね?


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