溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
朝、晩とたっぷりキスをされ、すっかりそれに慣らされている自分に初めて気がついた。
それが嫌じゃないことが、非常にまずい。ゆゆしき事態だ。でも、もっとこの人と触れていたい。
ダメだと思いながらも背中に手を回すと、主任の腕が私の腰に回った。一ミリも隙間がないくらいに抱きしめ合って、唇を重ねる。
こうしていられる時間は、限られている。そう思うと、ここが会社だということなど、どうでもよくなってしまう。
少しでも長く、この人に触れていたい。
「……そろそろやばいな。残念だけど、時間切れか」
そう呟いた主任が、唇を離す。それから私の顔を見て、ふっと微笑んだ。
「今日は忙しい日になりそうだったから。これでがんばれそうだな。沙奈はもう少し経ってから戻ってきな」
ぎゅっと一度私を抱きしめてから、優しい手つきで頭を撫でる。
「そんな色っぽい顔、他の男に見せないようにね。俺、今日は一日外に出てるから、また夜に。沙奈も、開発部との会議がんばって」
チュッと頰にキスをして、主任が会議室から出て行く。バタンとドアが閉まった瞬間に、ヘナヘナと椅子に座り込んだ。
「なに、あれ。本当、ずるい」
ドキドキが、なかなか落ち着いてくれない。
胸の奥が甘く疼いて仕方がない。あんなにあった鍵が、もう残り少なくなっている。
きっとそれがすべて外れてしまうのも、時間の問題だ。