溺愛御曹司は仮りそめ婚約者

「じゃあ、なに? ちゃんと俺の目を見て答えて。これ、上司命令ね」

う、それは卑怯だ。おずおずと視線を戻すと、いつもの眼鏡をかけていない、困ったように眉尻を下げた桐島主任と間近で目が合った。

至近距離でその顔を見て主任、奥二重なんだな、とか。イケメンは目まで綺麗なんだな、とか。
なぜだか、そんなどうでもいいことを考えてしまう。だけど、私の言葉を待っている主任を見て、目の保養をしている場合じゃなかったと口を開く。

「し、仕事のことじゃないんです。いや、思うように進まなくて煮詰まってはいますが……そもそも進まないのは、プライベートな理由で」

「……ふうん。プライベートな理由、ね。とりあえず、煮詰まってるなら仕事はもう終わりにして。いい機会だから、飯でも食いに行こう」

「ええ!?」

思いもよらない誘いに、つい大きな声を出してしまって慌てて口を押さえる。そんな私を見て、クスッと口元を綻ばせた桐島主任に、驚いて目を見開いた。

い、今……笑った? 幻かとパチパチと目をしばたたかせていると、彼はさらにクスクスと小さく笑っている。

「素直だよね、浅田さんて。俺のこと、苦手でしょ」

「え、いや……そんなことは……ないんです、けど。今まで、接点も……あの」

図星を突かれて、しどろもどろにごまかそうとする私を興味深げに見つめていた桐島主任が、ぷっと吹き出した。声を出して笑っている姿に、驚きすぎて固まってしまう。

でも、笑うと大分印象が変わる……かも。いつもこんな顔をしていたらいいのに。

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