溺愛御曹司は仮りそめ婚約者

これなら誰にも見られる心配はないなと、ほっとしたところで視線を感じる。視線を正面に戻すと、真顔の主任と目が合った。

鋭い視線に身体をビクッとさせる私を、桐島主任はなぜか笑みをたたえて興味深そうに見つめている。

「浅田さんて、プライベートは仕事のときと全然印象が違うタイプなんだね。普段はきっちりしてて隙がないのに、今はすごくわかりやすい」

「え、そ、そうですか?」

「うん。感情だだ漏れで、見てて飽きない。かわいいね」

聞き慣れない言葉に、顔に熱が集中するのが自分でもわかった。

「き、桐島主任こそ。今日は眼鏡もしてないし、笑ったのも……初めて見ました」

「ああ、そっか。別に目は悪くないから。仕事中は、いろんなしがらみがあるからね。たかが眼鏡だけど、俺にとっては大事なアイテムなんだ。ゲームだとさ、そういうの身につけると強くなるでしょ? そんな感じ。それに俺だって、仕事を離れれば浅田さんと同じ普通の二十八歳だよ。当然、喜怒哀楽もある」

それもそうか。いくら顔よし、頭よしの完璧人間だって感情はあるよね。もしかして、感情が顔に出ないタイプなのかもな。

ひとり納得していると、主任が注文した料理が運ばれてきた。それを見て、思わず感嘆の声をあげる。

「わあ、綺麗」

本物の柚子の容器を使っていたり、かわいらしい手まり寿司には季節を先取りしているのか、桃の花が添えられている。

お店の名前が刻印されただし巻き卵も、笹の上に並べられていて横に竹で出来た容器が置いてあり、そこに大根おろしと笹の葉で作った花が添えられている。

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