どんな君でも、愛おしくてたまらない。




上半身を起こそうとしたが、力が入らなくて起き上がれない。


それに、左側に違和感を感じる。



おかしいな。

自分の体じゃないみたいだ。



葉上先生は『そのままでいいよ』と気遣って、話を続けた。



『莉子ちゃん』


『は、はい……』


『何があったか、覚えてる?』



勝手に、記憶が遡る。


寒々しい温度、激しい吹雪、重厚な音、揺れる車、お母さんとお父さんの叫び。

それらが、脳内をかき乱した。



心臓が、ドクドク、うめき出す。



『覚えてるけど……何も、わからないです』



正直に返答した。



気がついたときには、真っ暗だったことは覚えている。


何が起こったんだろう。



< 73 / 231 >

この作品をシェア

pagetop