どんな君でも、愛おしくてたまらない。
上半身を起こそうとしたが、力が入らなくて起き上がれない。
それに、左側に違和感を感じる。
おかしいな。
自分の体じゃないみたいだ。
葉上先生は『そのままでいいよ』と気遣って、話を続けた。
『莉子ちゃん』
『は、はい……』
『何があったか、覚えてる?』
勝手に、記憶が遡る。
寒々しい温度、激しい吹雪、重厚な音、揺れる車、お母さんとお父さんの叫び。
それらが、脳内をかき乱した。
心臓が、ドクドク、うめき出す。
『覚えてるけど……何も、わからないです』
正直に返答した。
気がついたときには、真っ暗だったことは覚えている。
何が起こったんだろう。