どんな君でも、愛おしくてたまらない。




漂う静寂を切ったのは、葉上先生だった。



『莉子ちゃん、落ち着いて聞いてほしい』


『葉上、先生?』




どうか、どうか、


頭に浮かんだ最悪なものとは


正反対の真実を、教えて。





『莉子ちゃんたちは、山の途中で雪崩に遭ったんだ』



じゃあ、あの重厚な音は、山に降り積もった雪が崩れる音だったんだ。


雪崩が、わたしたちが乗っていた車を巻き込んで、……それで?



それで、どうなったの?




『雪崩がおさまって、発見したときにはもう……』



この言い方じゃ、まるで。


葉上先生はひと呼吸置いて、わたしと目を合わせて伝えた。




『ご両親は、亡くなっていた』




知りたくなかった最悪な真実が、耳の奥でこだまする。



< 75 / 231 >

この作品をシェア

pagetop