どんな君でも、愛おしくてたまらない。



たぶん赤くなっている顔を、前髪で隠そうとした。


だけど、朗らかな笑い声が聞こえて、視線を上げる。



「うん」

環くんは微笑んで、たった一言ささやいた。



また、初恋の熱を帯びた気持ちが姿を現し、胸を甘く締め付けた。




「わ、わたしのことも、ぜひな、な、名前で……!」



盛大に噛んでしまった。


恥ずかしい!




「莉子ちゃん」




……ずるい。


そんな、さらっと呼ぶなんて。



でも、仲良くなれたみたいで、嬉しいな。




臆病な心に、ひだまりが生まれる。


きっと、これを「勇気」と呼ぶんだろう。




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