どんな君でも、愛おしくてたまらない。
わたしは深呼吸をしてから、校舎に入った。
「じゃあ、俺は保健室に寄っていくから」
「うん」
上履きを履いたあと、環くんとは反対の方向に廊下を歩いていく。
一人になった途端、足が震えだす。
大丈夫。
大丈夫だ。
元気が出る呪文を心の中で唱えていたわたしの弱気な背中に、
「莉子ちゃん!」
さっき別れたばかりの環くんの声が投げかけられ、反射的に振り向く。
「頑張って」
環くんが、笑顔でエールを送ってくれた。
『頑張れよ』
葉上先生の言葉と、重なる。
そうだ。
頑張れ、わたし。
わたしは大きく頷いて、再び歩き出した。