溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
「悪かった。流石に悪ふざけが過ぎた。
貴女が必死になる様子が可愛くてね」
くくっと笑ってもう一歩遠ざかる。

その様子を確認して、
はっとありすは気づいて、一歩二歩と後ずさる。

「あの……私戻ります」
「ああ。俺ももう少ししたら戻る。
──つい、ここが懐かしくてな」

彼の傍に立つ桜の木を見上げると、
ふっといたずらっ子の様な瞳を細める瀬名に、
なぜか、ありすは足を止めた。

「……懐かしい? この桜の木がですか?」
「ああ。この庭は、親に連れてこられたパーティで
退屈すると、この庭に出てきて……よく遊んだ庭なんだ。
桜の木に登っていたら、
探しに来た親に怒られたこともあったな」

くくっと楽しそうに笑う瀬名の姿に、
その低くて魅力的な声音に惹かれ、
屈託のない笑顔に、つい惚れてしまったありすは
無意識で、その言葉に答えるような言葉を返していた。

「そうなんですか、私もこの庭には、
父親の開いたパーティの合間に、
良く遊びに来てたんです」
ありすの言葉に、瀬名は
ふわりとありすに向かって手を伸ばす。

「──っ」
伸ばされた手は優しくありすの頭に触れて、
ありすが想像したよりもずっと優しく、
ありすの頭を撫でた。
ありすはびっくりして、その手が離れた後、
そっと自分の頭を触れてじっと瀬名を見上げる。

「そうか、なら、貴女と
ここで会っていたかもしれないな」

明るく破顔した表情に
つられるように、ありすもおずおずと笑みを浮かべた。
「そうかも……しれないですね」

──その時。、
ホテルの部屋の方から何か視線の様なものを感じて、
後ろを振り返る。
(って気のせいかな。もしかして橘さんかな?……)
ふとそんな気がして、ありすは瀬名に向かって頭を下げた。

「あの……私、そろそろ会場にもどります」
ありすはそう言うと、
ゆっくりと会場に向かって歩き始めた。


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