溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
「失礼しました。
私は藤咲 隼一郎(ふじさき しゅんいちろう)と申します」
紳士的に名前を名乗る様子に、少しだけホッとして、
ありすは頭を下げてから、
テレビで見掛けるその名前と容貌に気付く。
「あの……代議士の……」
目の前に立っているのは、マスコミでも人気のある
元大臣経験のある父を持つ、与党の二世議員だ。
ただ、控えめで生真面目そうな様子と、
マスコミに人気なだけあって、
凛々しい容姿に圧倒されてしまって
ありすは、言葉を失ってその人を見上げた。
「ええ、そんな感じです」
ふわっと笑った表情は、人好きのする爽やかな笑顔。
「あの、久遠寺ありすです」
うっかり見惚れそうになって、ありすは
慌てて頭を下げると、彼はスマートな仕草で
給仕を呼び、温かい飲み物を取ってくるように頼む。
「外に出ていらしたんですか?
寒そうな顔をしていらっしゃる……」
「……はい、ここの庭が好きなので」
男性にそう答えながら、
さっき会った二人の男性を思い出すと、
何処か共通するような、不思議な感じを覚える。
何だか懐かしい記憶をどの出会いにも感じるのは、
ここがありすにとって懐かしい場所だからだろうか。
「ああ、悪いね。ありがとう」
藤咲は給仕の男から温かいココアを受け取ると、
ありすに、カップのみを手渡してくれた。
「……ありがとうごさいます」
温かいカップに両手を包み込むと、
早春の夜の寒さは窓越しになり、ほっと笑みが零れた。
「貴女は笑顔が素敵ですね。
見ている人の心を穏やかにしてくれる、そんな笑顔です」
そんなセリフも、爽やかな笑顔と共に言われると、
素直に受け取れてしまう。
顔を少し赤らめながら、ありすは
「ありがとうごさいます」
と小さな声でつぶやいた。
私は藤咲 隼一郎(ふじさき しゅんいちろう)と申します」
紳士的に名前を名乗る様子に、少しだけホッとして、
ありすは頭を下げてから、
テレビで見掛けるその名前と容貌に気付く。
「あの……代議士の……」
目の前に立っているのは、マスコミでも人気のある
元大臣経験のある父を持つ、与党の二世議員だ。
ただ、控えめで生真面目そうな様子と、
マスコミに人気なだけあって、
凛々しい容姿に圧倒されてしまって
ありすは、言葉を失ってその人を見上げた。
「ええ、そんな感じです」
ふわっと笑った表情は、人好きのする爽やかな笑顔。
「あの、久遠寺ありすです」
うっかり見惚れそうになって、ありすは
慌てて頭を下げると、彼はスマートな仕草で
給仕を呼び、温かい飲み物を取ってくるように頼む。
「外に出ていらしたんですか?
寒そうな顔をしていらっしゃる……」
「……はい、ここの庭が好きなので」
男性にそう答えながら、
さっき会った二人の男性を思い出すと、
何処か共通するような、不思議な感じを覚える。
何だか懐かしい記憶をどの出会いにも感じるのは、
ここがありすにとって懐かしい場所だからだろうか。
「ああ、悪いね。ありがとう」
藤咲は給仕の男から温かいココアを受け取ると、
ありすに、カップのみを手渡してくれた。
「……ありがとうごさいます」
温かいカップに両手を包み込むと、
早春の夜の寒さは窓越しになり、ほっと笑みが零れた。
「貴女は笑顔が素敵ですね。
見ている人の心を穏やかにしてくれる、そんな笑顔です」
そんなセリフも、爽やかな笑顔と共に言われると、
素直に受け取れてしまう。
顔を少し赤らめながら、ありすは
「ありがとうごさいます」
と小さな声でつぶやいた。